カナディアン・キルトの世界

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 夫のおじいさんの亡くなった後、娘にあたる夫の母のジョイスがおじいさんの海賊の宝箱のような古いトランクを整理していると、底の方から見覚えのない、作りかけのキルトが何枚も出てきました。ジョイスや兄弟が子どもの頃着ていた服の生地がパッチワークに使われているから、50年から60年以上も前のものです。

 赤毛のアンに出てくるような伝統的なパターンのキルトで、一枚は扇子のパターン、もう一枚はダイヤモンドのパターンでした。両方とも断片的につながっていますが、まだ完成にはほど遠い状態でした。ジョイスの母親は何十年も前に亡くなっていて、誰が作っていたのかはっきりとわかりませんが、使われている布地から、多分ジョイスの母親と姉妹がいっしょに作っていたのだろうということです。こうして何十年もタンスの底に眠っていたキルトが陽の目を見ることになりました。

 ジョイスはもともとお裁縫が得意で、子ども服からお父さんのワイシャツまで仕立てあげる腕前。小学校の教師を定年退職したばかりで、時間はたっぷりあります。この2枚のアンティークキルトを半年がかりで、手縫いで仕上げました。懐かしい家族の着ていた服のつながった、半世紀前にタイムスリップしたような思い出深いキルトです。こうしてジョイスの第二の人生はキルト作りから回転し始めました。

リサイクルから生まれた芸術性
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 ジョイスが仕上げたような古い布をつないで作るキルトは、元祖リサイクル。物があふれる現代とは違って、フロンティア時代は子どもが5人以上の家族がふつうで、経済的なゆとりのない暮らしでした。それで、リサイクルは必然的だったのでしょう。

 キルトは家族の古着などを再利用して、美しいパターンを生み出し、ベットカバーやひざ掛けなどにリサイクルすることから始まりました。実用と芸術性を兼ねたカナダの素敵な伝統です。トラディショナルなキルトのパターンはそれこそ何百とあるそうですが、ほとんどが自然をモチーフにしたものだそうです。花や雪の結晶やログキャビンなどを幾何学的な形にデザインした、素朴な配色のキルトはカナダのB&B(ベッド&ブレックファースト)でもよく見かけます。アットホームで落ち着いた印象、自然豊かなカナダらしいカントリー風のインテリアによくマッチします。

おしゃべりと創作は長生きのカギ?
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 現在のキルト愛好家たちは、趣味でアンティークの布を探す人もいるそうですが、もちろん新しい布地を使っています。中にはキルト専門店に負けないぐらいの、一生かかっても使い切れないほどの布地のコレクションがある人もいるそうです。

 ジョイスの布地のコレクションも年々増えています。近くの町で毎年、キルトの展示会が催されています。天井から吊り下げられた大きなキルトの一枚一枚が個性的で完成までに費やされた時間にため息がでます。もちろんジョイスも常連で毎年出品しています。

 グループの作品もあります。老人ホームを訪問したとき、日当りのいい部屋にキルトの大きなフレームを真ん中に置いて、高齢の女性たちが4,5人周りに座って、おしゃべりしながら針を動かしていました。長年の熟練からおしゃべりしながらでも正確に針を動かしているのに感心しました。おしゃべりと創作が元気に長生きするカギなのでしょうか。私も見習いたいものです。

寒い冬もこっぽり包んで暖か
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 その後、ジョイスは自分のベッドルームのキルトを作り、4人の子供と9人の孫のキルトに取り掛かりました。私たちもベッドルームの色調に合わせたキルトをプいただきました。キルトのベットカバーはインテリアとしての美しさだけでなく、カナダの寒い冬の夜もこっぽりとベットを包んで暖かいです。また綿なので涼しいカナダの夏の夜にも心地よいです。

 ジョイスはトラディショナルなキルトだけには飽き足らず、創作キルトをデザインしています。工房の壁におおきなフェルト地を張って、その上でデザインや布の配置を並べ替えてデザインを決めます。この時間が一番楽しいそうです。

 デザインが決まったら、キルト専用のミシンでつなげるので、それほど時間はかからずに、ぱぱっと仕上がります。私の娘を入れて、女の子の孫が5人いますが、みんなおばあちゃんのキルトの工房に遊びに行くのが楽しみです。遊びに行くたびに、デザインを考えて、おばあちゃんの指導のもと、小さなキルトのクッションやかばんを作っています。

日本でも人気のキルト
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 ジョイスはキルトを始めた当初からブログを書いています。作品の記録になる上、何よりも世界中のキルト愛好家との情報交換や交流が楽しそうです。

   J'S QUILTING BLOG
   http://www.jdebreuilsartandquilts.blogspot.com/

 カナダではキルトは伝統的な趣味で、年配の女性に愛好者が多いようですが、新しい機械を使ったり、インターネットを使って情報交換したりと、古い伝統と新しい技術がうまくミックスされています。また伝統的なパターン、創作キルトなど種類もいろいろあります。カナダのキルトの世界は伝統と創作の両方で受け継がれています。

 日本でも人気のあるキルト、日本人のキルト作家の作品のすばらしさはカナダでも有名です。あなたもひざ掛けぐらいの小さいキルトを作ってみませんか。キルトには外から帰ってきて疲れた身体と心を、くつろいだ気分にさせる不思議な魔法があるように思います。
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by madame-f | 2010-01-04 06:50 | お気に入り | Trackback | Comments(0)

スラッシュキルトのバッグ
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